第二次臨時行政調査会の土光敏夫会長が臨調以外のほとんどすべての役職をやめると言い出した。その決意は固く、おもだったものだけでも三十以上にのぼる役職のうち日中経済協会会長、国際開発センター会長など、すでに辞任願を出し終えたところもある。周囲や関係団体に相談することもなく抜き打ち的に“身辺整理”を始めたことから、土光流ショックが広がっている。
役職を減らすことは土光氏が臨調会長を引き受けた時からの方針だった。当時八十ほどあったのを「行革に精力を集中するために」と三十にまで減らしてきた。
臨調内では国鉄改革論議が盛んだが、各委員の意見が分裂。一方で自民党内からは臨調の独走を警戒しようとする動きが出ている。土光氏は「いろいろ意見が出てこそ民主主義というものだ」とは言うものの、側近によれば最近いっそう無口になり、考え込む時間がふえたという。
やめるといわれた方の団体は当惑しきっており「まだ何の連絡もない」(日中経済協会)、「ウチに限っておやめになるとは思えない」(国際科学技術博覧会協会)と打ち消しに懸命。土光氏が郵政審議会会長を務める郵政省、航空審議会会長になっている運輸省も同じような反応だ。
それにしても土光氏の身辺整理で今さらながらに話題になりそうなのが、財界人の肩書の多さ。土光氏の三十などというのは超大物財界人としては異例に少ない方で、たとえば稲山経団連会長は団体の会長、理事長職と審議会関係だけでも百二十八にのぼる。日本麻雀連盟総裁など個人の趣味でやっているものまで含めれば、これよりはるかに多くなる。永野日商会頭になるとわかっているだけでも役職数は六百以上になるという。
やめるといわれた関係団体は、土光氏の威光を失うまいと懸命に引き止めるだろうが、土光氏の辞意が固く翻意させられなければ他の大物を迎えるしかない。土光氏がやめたあと、だれがあとがまに座るのか。早くも財界内の関心を集めている。 (日本経済新聞)